毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。
2024.11.08
「ベルナデット 最強のファーストレディ」 ドヌーブがちゃめっ気たっぷりに演じる実在の仏大統領の妻
夫のジャック・シラク(ミシェル・ビュイエルモーズ)を大統領にするため、献身的に支え続けてきた妻のベルナデット(カトリーヌ・ドヌーブ)。ついにそのときがやってきたが、夫や広報アシスタントを務める娘から、すべてが時代遅れだとのけ者にされてしまう。自分の居場所を見つけるため、彼女が参謀に迎えたのはエリゼ宮職員のベルナール・ニケ(ドゥニ・ポダリデス)。綿菓子のような色合いのファッションを知的な雰囲気のものへ。慈善事業に力を入れ、著書を刊行して自己開示するなど、さまざまな計画を実行に移していく。
メディアを味方にすべく元々の聡明(そうめい)さを表に出して変身していくベルナデットを、ドヌーブがちゃめっ気たっぷりに好演。夫のみならず娘との関係にもフォーカスして、古い時代を生きてきた妻、母が抱える複雑な思いを描き出した。一方でジャック・シラクの描かれ方は〝悪者〟として単純明快。フィクションとはいえ、実在の人物を基にした作品としてはもう少し掘り下げてほしかった気も。レア・ドムナック監督。1時間33分。東京・新宿ピカデリー、大阪・なんばパークスシネマほか。(細)
ここに注目
仏元大統領夫人の言動にフィクションを織り交ぜ、ユーモアとアイロニーたっぷり。遊び心満載で詰め込み過ぎた感もあるが、横暴なシラク大統領への反撃が爽快で、着々とエンパワーメントしていく姿をドヌーブがコミカルに演じた。この国なら、さしずめ安倍晋三元首相夫人の昭恵さんか。ぜひ!(鈴)