ひとしねま

2024.3.15

チャートの裏側:アカデミー賞効果どこまで

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

2本の日本映画が米アカデミー賞を受賞したが、興味深いのは、2本ともが上映中だったことだ。特に宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」は、公開9カ月目にして、いまだに上映されている。アカデミー賞の結果を待っていたかのごとくだ。このロングランは意図的である。

公開時、「アカデミー賞を狙っている」と関係者に聞いたことがある。狙い通りになった。受賞を受け、15日からは館数が増える。何と、米国人俳優による吹き替え版も20日から上映予定という。山崎貴監督の「ゴジラ-1.0」は300館以上で上映中なので、現状維持らしい。

日本映画のアカデミー賞効果で、最も威力を発揮したのは滝田洋二郎監督の「おくりびと」である。そのときも、公開から約半年が過ぎていた。上映が終わっていた映画館も多くあったが、再上映された。今回同様にメディア露出も頻繁で、興行収入は大幅増になった。

時代の移り変わりを感じる。興行面におけるアカデミー賞効果といえば、かつては当然のように洋画のことを指していた。ところが、一昨年の濱口竜介監督の「ドライブ・マイ・カー」も含め、アカデミー賞効果が日本映画に関わることも珍しくはなくなった。今回、どこまで伸びていくか。アカデミー賞は、映画の現在を知る重要なバロメーターの一つでもあろうか。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)

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