ひとしねま

2023.4.21

チャートの裏側:期待に応え続けるコナン

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

上映終了後、いつもの満足感あふれるザワザワが場内に響きわたった。「相変わらず、コナンはすごいわ」。こんな声も耳に入った。「名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)」だ。いつも以上に、この様子が興行に現れた。3日間の興行収入は31億5000万円。シリーズ新記録だ。

すさまじい数字だが、メガヒットが続く邦画アニメとは全く違う点がある。毎年、この時期に公開されるローテーション番組、いわゆるフランチャイズ化したシリーズものだということだ。一過性ではない。期待の度合いが尋常ではない。甚大な期待に応える作品の成果を出し続けることが求められる。

AI(人工知能)の最先端技術開発に、ある組織が触手を伸ばす。そこにコナンと相棒の灰原哀の秘密がかかわる。コナンは、この新技術に疑念をもつ。結果として、それは人が知られたくない領域に入り込んでいく。最近、何かと報道されるチャットGPTを思い起こさせる。

今回、AIの進化を題材にしたことで作品世界が一段と広がったと思う。新システムを介した暗躍、データの真偽をめぐる駆け引きなど、これから起こりえる現実世界と無縁の話ではない。膨れ上がる期待に、よく応えた。ただ、この先はさらに困難な道が続く。製作側にとって数字が上がるとは、そういうことだ。このシリーズの宿命である。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)