ひとしねま

2023.6.23

チャートの裏側 :アメコミ映画に新局面

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

米国の2大コミックレーベルの2作品が同時に公開された。客層が重なる部分もあるので、めったにあることではない。米映画の大作が多く並ぶ7、8月の時期を避けたと聞いた。作品数が多過ぎることも影響しているだろう。観客からは、なかなか見えてこない業界事情がある。

マーベル映画の「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」と、DC映画の「ザ・フラッシュ」だ。最初の3日間では、前者のアニメーションが3億9600万円と健闘。後者の実写作品が2億1500万円と少々振るわない。今回は「ザ・フラッシュ」に絞り込んでみる。

感動した。DC映画の歴代ヒーローが登場する。というより、ヒーローを演じた俳優が登場すると言い換えたい。こうしたことは、マーベル映画でも行われているが、DC映画は一味違う。年を重ねた俳優たちが多いのだ。その姿がヒーロー映画の歴史と重なり、ジーンとくる。

驚いたこともある。時制、時空を駆け巡ることが多いアメコミ映画などの話の展開に、新しい局面が見えたからだ。過去にさかのぼって現在を変える。この設定をぐらつかせる。ハリウッド流のエンタメ大作の定型化にくさびを打つ。ただ、俳優へのリスペクトを含めて、本作の見どころは興行に反映はしない。悲しいかな、このような野心的試みが通用しなくなっている。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)

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