ひとしねま

2023.5.19

チャートの裏側:ゲーム感覚の映画が好評

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

3週連続トップの「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」は、興行収入約80億5000万円を記録した(14日時点)。130億円突破もありえる。100億円以上なら、洋画アニメーションで6本目の快挙となる。今回重要なのは、ゲーム発のアニメが、数字を大幅に伸ばしたことだ。

ネット上などでは、「ゲームの特性を生かしていて面白い」との評価をよく見かける。これは、マリオらのキャラクターの動き、アクションなどが、ゲームの世界観を反映しているということだろう。話の展開はあるが、それ以上にゲーム感覚の楽しさを満喫させてくれる。

一方で、「作品に深みがあまりない」との意見も散見される。こちらは、話の起伏やキャラクターの斬新性などが物足りないということだろう。ゲームと映画は違う。映画的なさまざまな肉付けがあるから、見るに値する。ゲーム感覚中心に楽しむのは、ちょっと無理がある。

いろいろな感じ方があろうが、一つ、映画の概念が今、大きく変わろうとしていることは指摘しておきたい。人々の中で、映画に求めるものが実に多様になってきた感がある。ゲームか映画か、子供向きか大人向きかといった単純な二項対立ではない。もっと深いところで、映画を巡る地殻変動が起きていると言うべきか。今作のメガヒットが、そのことを告げている。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)