ひとしねま

2024.3.01

チャートの裏側:オリジナル企画の健闘

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

タイトルがそそる。初登場2位の「マッチング」だ。3日間で興行収入が約3億円。健闘ではないか。男女の出会いを目的とするマッチングサービスを介在させたサスペンスだ。本作はオリジナル企画である。人気原作の実写化作品が多数を占める中、貴重な試みだと言えよう。

脚本も担当した内田英治監督は、ヒットした草彅剛主演の「ミッドナイトスワン」が印象深い。緻密な人間劇が魅力的だった。こちらもオリジナルだ。加えて、監督は幅広いジャンルの作品を手掛ける。安定した興行実績も定評がある。なかなか、他に見当たらない監督である。

本作は、マッチングアプリを利用して結婚した男女が犯罪に巻き込まれるところから始まる。ただ意外に、ドロドロした男女の愛憎劇が中心点にある。現代的な道具仕立ての作品と思ったが、松本清張風とも言える作風が、ちょっと過激な装いで今によみがえった感覚があった。

とはいえ、こうも思った。もっと観客を意識のらち外に落とし込む、より深度の増した話の展開にできなかったか。犯人の1人が早い段階で分かる。その後、二転三転はあるが、終わり方の衝撃度が少々弱い。出演者の1人、好演した佐久間大介のファンが観客に多いという。それはいいのだが、もっと客層の幅を広げる仕掛けが見たかった。それができる監督だと思う。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)

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