ひとしねま

2023.12.01

チャートの裏側:「第3弾」もあるかも

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

続編が製作されるのは意外だった。「翔んで埼玉」の第2弾である。大ヒットした前作は、「ダ埼玉」の埼玉県(人)に対する自虐的な笑いが受けた。ただ、このネタは2回目はきついだろう。すでに手の内を見せている。笑いはパターン化する。ただ、また受けてしまった。

琵琶湖がある滋賀を第2の埼玉に設定した。これが二番煎じを、かろうじて免れた理由だ。加えて、大阪、京都、兵庫対滋賀、和歌山、奈良という「戦い」の構図を持ってきた。前作の関西版である。こう書くだけでバカバカしくなってきたが、そういう作品だから仕方がない。

東京都内のシネコンで見たのだが、あまり笑えなかった。「とび太くん」など、滋賀ネタに親しみがわかない。埼玉、滋賀のシネコンでは笑う人もいるだろう。関西圏の観客も微妙な感情を抱きつつ、それなりに新鮮だったかもしれない。興行、反応ともに地域差を感じる。

大阪が悪役である。ライバル視する東京に歯が立たない大阪の屈辱的な歴史が、話の背後からうかがえる。ここから、日本大阪化計画が始動する。これは興行的な戦略ではないか、とふと思った。滋賀地域だけでは人口が知れている。関西圏の人たちの関心を増幅させてこそ、ヒットにつながる。だから、第3弾もある気がしてきた。名古屋か福岡を中心にしたあたりか。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)