ひとしねま

2023.12.15

チャートの裏側;魅力的なものには毒がある

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

いい邦題をつけた。原題の「ウォンカ」を、「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」とした。「チャーリーとチョコレート工場」(2005年)の前日譚(たん)的な話に当たるからだ。前作を知っている人も知らない人も、この邦題によって関心の度合いが高まるとの判断であろう。

最初の3日間の興行収入は4億1000万円。健闘と言っていい。前作は主演のジョニー・デップの人気も高く、54億円の大ヒット。当時見た人は、その時の強烈な印象を胸に、映画館に赴いたかもしれない。見ていなくても、チョコレート工場を舞台にした蠱惑(こわく)的なファンタジー世界は心躍らせるものがある。

チョコざんまいで、子どもたち、チョコ好きなら夢の映画だ。ところが、夢心地のただ中に不穏な要素が挟まれる。チョコによって飛翔(ひしょう)するなどの描写はともかく、精神の高揚感が度を越しているのだ。言えなかったことも言えるようになる。チョコはおいしいだけではない。

前作も不穏だった。工場見学者に選ばれた「悪い子たち」が、お仕置きされる話が見せ場になっていたからだ。魅力的なもの、快楽的なものには毒がある。「チョコレート工場」というネーミングは両義性を持つ。その微妙な采配に、人々は魅了されるのだろう。ダークファンタジーの真骨頂、ここにあり。洋画低迷の折、うれしいヒットだ。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)

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