ひとしねま

2023.10.20

チャートの裏側:「大笑いしたい」は難題か

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

吉本新喜劇のテレビ放送をときどき見る。ボケとツッコミの絶妙なセリフと間に、大笑いさせられるからだ。両者がかみ合わないと、笑いは滞る。お笑いの原則中の原則であろうが、吉本新喜劇には、この伝統が今も根強く息づいている。特に、女性芸人のパワーに圧倒される。

いきなり、吉本新喜劇に触れたのには訳がある。コミカルな要素を持つ「ゆとりですがなにかインターナショナル」を見て、それほど笑えなかったからだ。笑いは人によって受け取り方は違うが、映画館の静けさが気になった。するとなぜか、吉本新喜劇が頭に浮かんだ。

最初の3日間の興行収入は約1億3000万円だった。テレビ局製作によるある程度の知名度、ジャンル性などを考慮すると物足りないと言える。その理由の一つが、笑いの提出の仕方にあったのではないか。テーマに沿った笑いの質が、逆に笑いを封じ込める。そんな感じがした。

本作は、グローバル化、LGBT、働き方改革、多様性などに関わる話の展開を持つ。今の時代における重要課題が多い。ただ、これらに笑いを盛り込むのは容易ではない。デリケートな面が強すぎる。それを承知している製作側は、笑いのやいばをどこかで引っ込めた感があった。シリアスな課題が、徐々にせり出してきた。映画で大笑いしたい。難しい注文なのだろうか。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)

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