「コンクリート・ユートピア」 © 2023 LOTTE ENTERTAINMENT & CLIMAX STUDIO, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

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2024.1.05

「コンクリート・ユートピア」 試される道徳心や欲望、人間の本質が浮き彫りに

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

未曽有の大災害により、廃虚となったソウル。崩壊せずに残った唯一のマンションに、人々が集まってきていた。無法地帯と化したコミュニティーを守るために居住者たちは独自のルールを作り上げ、住民のリーダーとしてヨンタク(イ・ビョンホン)が先頭に立つことになる。さえない男に見えた彼は、次第に違う顔を見せていく。

狂気をにじませるビョンホンをはじめ、韓国の人気俳優が集結。ヨンタクに心酔していく公務員役のパク・ソジュン、ケガ人に手を差し伸べる心優しい看護師で、公務員の妻役のパク・ボヨンらの共演によって、人間ドラマに奥行きが生まれている。食料を手にするのも難しい日々の中で浮き彫りになっていくのは、きれいごとを言っている場合ではない局面で試される道徳心や欲望、排他的になっていく人間の本質だ。3階建てのマンションを造ったというセットは細部までリアル。俳優陣の芝居と相まって、結局は人間が一番恐ろしくもあり、希望の光にもなるのだというメッセージが説得力とともに伝わってくる。オム・テファ監督。2時間10分。東京・丸の内ピカデリー、大阪・シネマート心斎橋ほか。(細)

異論あり

さすが韓国。セットの豪華さも俳優陣の存在感も、圧巻。しかし、いささか大味。大災害が何か全く示さないのはともかく、住民たちの自警団が排撃的になり過激化していく過程が単調で、ヨンタクの変貌ぶりも型どおり。終盤、鍵を握るとある人物の唐突な扱いに呆然(ぼうぜん)。(勝)