「告白、あるいは完璧な弁護」 ©2022 LOTTE ENTERTAINMENT & REALIES PICTURES All Rights Reserved.

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2023.6.23

「告白、あるいは完璧な弁護」

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

ⅠT企業の社長ユ・ミンホ(ソ・ジソブ)の不倫相手キム・セヒ(ナナ)が、密室となったホテルの一室で殺される。第1容疑者のミンホは潔白を主張。敏腕弁護士ヤン・シネ(キム・ユンジン)を雇い、自身の山荘に呼ぶ。ミンホは以前起きたある交通事故がセヒの殺人に関係しているかもしれない、とシネに告白。事件の再検証が始まる。

舞台は雪で閉ざされた山荘で、ミンホとシネの会話で物語は進む。二つの事件をめぐるミンホの証言とシネの推理が錯綜(さくそう)し、事件の様相が二転三転、思わず「エッ」と前のめりになる。見方を少し変えただけで、思わぬ展開を見せるのだ。その緊迫感が作品の柱になっていく。密室殺人事件の真相に迫るにつれ、ミンホらが内面を探り合う心理戦へと姿を変えていく。重層構造の会話劇と言ってもいい。

山荘に続く狭い道路、森と湖というロケーションが緊迫感と孤立感を増大させる。ユン・ジョンソク監督は無駄な描写をはぎ取り、手際よく作品の核心に導く。ソ・ジソブ、キム・ユンジンの白熱した演技は、高い純度を保っている。1時間45分。東京・シネスイッチ銀座、大阪・シネマート心斎橋ほか。(鈴)

ここに注目

元ネタのスペイン映画「インビジブル・ゲスト 悪魔の証明」は、回想シーンの嵐が吹き荒れる傑作ミステリー。海外作品のリメークに定評ある韓国映画界が、先読みを許さない複雑なプロットを映像化した。殺人容疑者と弁護士の対話に、意外な脇役が絡み、感情的にもヒートアップする展開が圧巻。(諭)