「悪魔と夜ふかし」

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2024.10.04

特選掘り出し!:「悪魔と夜ふかし」 恐怖とユーモア、配合が絶妙

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

虚構のストーリーを記録映画の様式で語るモキュメンタリーが、近年ホラーの分野で再注目されている。オーストラリアのケアンズ兄弟が監督を務めた本作は、その一種のファウンド・フッテージ(いわく付きの埋もれていた映像素材)ものだが、アイデアが斬新。おまけに芸の細かさがすごい。

1977年のハロウィーン、アメリカでトークショーの放送中に超常現象が発生。そのマスターテープが発見されたという設定のもと、番組の一部始終を見せていく。

軽妙な話術が持ち味の人気司会者ジャック・デルロイ(デビッド・ダストマルチャン)が、霊能力者や心理学者をゲストとして迎えるが、そのオカルト特番は奇妙な出来事が続発。そして悪魔に取りつかれたとされる少女が登場する後半、信じがたい惨劇が起こる。

舞台となるテレビスタジオはレトロな美術に彩られ、ジャズバンドの生演奏、観覧客のリアクションが臨場感を生む。趣向を凝らした恐怖描写とユーモアの配合が絶妙で、天真爛漫(らんまん)な少女が魔物へひょう変するシーンに背筋がぞくり。すべては作り物とわかっていてもぐいぐい引き込まれ、モキュメンタリー・ホラーの新たな可能性を感じさせる。1時間33分。東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田ほか。(諭)

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