「ダム・マネー ウォール街を狙え!」 © 2023, BBP Antisocial, LLC. All rights reserved.

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2024.2.02

「ダム・マネー ウォール街を狙え!」 SNSで結束した無力な個人投資家らの逆襲

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

コロナ下の2021年に米国の株式市場を揺るがした実話の映画化。実店舗でゲームソフトを売るゲームストップ社は、時代遅れで倒産間近とささやかれていた。平凡な会社員キース(ポール・ダノ)は同社が過小評価されていると思い、全財産の大半を投じて同社株を購入。やがてキースがネット掲示板で配信した動画に大勢の個人投資家が共感し、大騒動が巻き起こる。

莫大(ばくだい)な資金力を誇り、同社株を空売りしてもうけようともくろんでいたヘッジファンドが、SNSで結束した無力な個人投資家らの逆襲により閉鎖の憂き目に。そんな事態が現実化し、米議会が調査に乗り出すほどになった前代未聞の出来事を、当時のニュース映像などを交えて描出。ジェットコースターのように乱高下する株価に翻弄(ほんろう)される庶民の悲喜こもごもを面白おかしく見せながら、強欲な金融業界に物申す社会派的な視点も盛り込んだ。ビンセント・ドノフリオ、セス・ローゲンらのくせ者俳優が脇を固め、いささか情報量過多だが、中身の濃い一作に。クレイグ・ギレスピー監督。1時間45分。東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田ほか。(諭)

異論あり

複雑な金融の仕組みが分からなくても、グイグイ引き込む語り口は見事。しかし、大勢の登場人物に割り振ったドラマは駆け足で、いささかおざなり。キースの妻や弟、彼を信じる個人投資家や敵役のヘッジファンドの大富豪らが、類型的に造形されて慌ただしく出入りする〝反乱〟の痛快さはもう一つ。(勝)