「HOW TO BLOW UP」 ©WildWestLLC2022

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2024.6.14

特選掘り出し!:「HOW TO BLOW UP」 緊迫のエコテロリズム

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

近年、欧米各国では環境活動家の過激な行動が問題視されている。美術館の絵画にスープをかけるなどがその一例だが、人命に関わる危険な事件も起きている。筆者もそうしたエコテロリズムに眉をひそめる一人だが、本作の出来栄えには驚かされた。気候変動学者アンドレアス・マルムの挑発的な著作「パイプライン爆破法 燃える地球でいかに闘うか」に触発された米インディーズ映画だ。

地球環境の悪化に人生を狂わされ、危機感に駆られた若者8人が、誰も傷つけないことを前提に、テキサス州の石油パイプラインの爆破計画を実行しようとする。新鋭のダニエル・ゴールドハーバー監督は、登場人物たちの切迫した事情や犯行動機、思わぬ誤算に見舞われる作戦の経過を、巧みに時間軸を操作して描出。古典的な集団活劇の様式と16㍉フィルムのビジュアルの荒々しい臨場感、迫真のサスペンスを融合させ、極めて濃度の高い映像世界を構築した。

FBI当局が「テロを助長する」と警告を発したいわく付きの作品だが、社会の不条理にあらがう若者たちの叫びを焼きつけ、複雑な問題を突きつけてくる。道徳的ジレンマに心かき乱される一級の犯罪スリラーだ。1時間44分。東京・ヒューマントラストシネマ有楽町、大阪・テアトル梅田ほか。(諭)

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