「HOW TO HAVE SEX」 ©BALLOONHEAVEN, CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION, THE BRITISH FILM INSTITUTE 2023© Nikolopoulos Nikos

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2024.7.19

「HOW TO HAVE SEX」 セックスへの無邪気な幻想と苦い現実

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

親友同士の10代の英国人少女タラ(ミア・マッケンナ・ブルース)、スカイ、エムが、バカンスを楽しむためにギリシャのクレタ島を訪れる。3人のうち唯一バージンですてきな出会いを夢見るタラは、同じホテルの少年たちと親しくなるが……。

3人がクラブやプールでパーティーざんまいの時間を満喫する前半は、ある意味、型通りの青春映画。ところが若者たちの狂熱が過ぎ去った夜明け後のリゾート地は閑散とし、あちこちにゴミが散乱している。これが初長編作のモリー・マニング・ウォーカー監督は、そんな一瞬にして様変わりする世界の見え方を主人公タラの内面描写にも適用し、驚くべき繊細さで彼女の心の揺らぎを映し出す。セックスへの無邪気な幻想と、それとはかけ離れた苦い現実。そのギャップを埋められないタラの困惑と孤独、むなしさや悲しみをすくい取り、気の置けない友人たちとの微妙な関係性も描いた。悩み、傷つき、それでも新たな一歩を踏み出そうとする少女の姿を見すえたこの映画、普遍的でかけがえのない感情が息づいている。1時間31分。東京・ヒューマントラストシネマ渋谷、大阪・テアトル梅田ほか。(諭)

ここに注目

10代の少女たちの性的好奇心と大胆さ、無知で怖いもの知らず故の危うさ、性的合意を巡る繊細な状況とその結果が生々しく描かれる。ウォーカー監督は彼女たちを諭すでも警告するでもなく、共感を込めて見つめる。関係性の中で生じる複雑な感情が、手触りとして感じられるのがリアルでユニーク。(勝)

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