毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。
2024.4.05
「インフィニティ・プール」 洗練と狂気が混じり合った独特の映像感覚
スランプ中の作家ジェームズ(アレクサンダー・スカルスガルド)が、資産家の娘の妻とともに孤島の高級リゾート地を訪れる。そこでジェームズは彼の小説のファンだという女性ガビ(ミア・ゴス)に誘われて立ち入り禁止区域をドライブし、ある罪を犯してしまう。しかも、この島には特殊な司法制度があった。
カナダの鬼才デビッド・クローネンバーグを父に持つブランドン・クローネンバーグ監督の長編第3作。クローン人間を用いた死刑の代替執行という異常な状況に直面した主人公が、倒錯的な性的興奮を経験し、さらなる悪夢のような運命をたどる姿を描く。
前作「ポゼッサー」に続き、特殊メークを駆使した生々しい身体損壊シーンを映像化。ハードな性愛描写も含め、R18+指定もむべなるかなという内容だが、クロアチアで撮影を行ったディストピア的な世界観、洗練と狂気が混じり合った独特の映像感覚も才気を感じさせる。取り扱い要注意の怪作、我こそはという人にだけ勧めたい。1時間58分。東京・新宿ピカデリー、大阪・MOVIX堺ほか。(諭)
異論あり
魔性のガビとそのとりこになるジェームズに、ゴスとスカルスガルドが妙にマッチ。だが、グロテスクで凄惨(せいさん)な、目をそむけたくなる場面が連続し、物語は倒錯性を見せるためのつなぎでしかない。異様な暴力と血、性描写を好むカルト映画。風刺やユーモアも足りず、疲労感はたっぷり。(鈴)