「ジャマウ・カショギ殺害事件 真犯人は逮捕されない」 © 2020 ORWELL PRODUCTIONS, LLC All Rights Reserved.

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2023.6.02

配信チェック:「ジャマル・カショギ殺害事件 真犯人は逮捕されない」 戦慄のサウジ

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

2018年10月2日、著名なサウジアラビア人ジャーナリストのジャマル・カショギが、トルコ・イスタンブールのサウジ総領事館を訪れ、計画的に殺害された。「イカロス」で第90回米アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞したブライアン・フォーゲル監督が、世界に衝撃を与えたこの大事件を検証した。

17年に渡米し、母国の体制を批判する活動をしていたカショギは、サウジ政府ににらまれていた。本作は絶対君主制国家サウジの特異性やカショギの経歴を伝えるとともに、トルコの捜査関係者、カショギの友人や婚約者らへの取材を実施した。

不都合な存在のカショギが総領事館にやってくると知ったサウジは、本国から15人の暗殺部隊を現地に派遣。トルコ政府が保有していた領事館内の音声記録(作品中で示されるのはテキストのみ)によって、残虐な犯行の細部が明らかにされる。米CIAはサウジの実権を握るムハンマド皇太子が暗殺を命じたと断定したが、当時のトランプ大統領は経済的利益を優先して取り合わなかった。

アマゾンの元CEO、ジェフ・ベゾスも巻き込まれる後半のエピソードでは、サイバー世界におけるサウジの知られざる強大さも描かれる。この世の闇の深さに、戦慄(せんりつ)また戦慄の一作である。1時間59分。U-NEXTで見放題配信中。(諭)

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