「型破りな教室」

「型破りな教室」 ©Pantelion 2.0, LLC

2024.12.20

「型破りな教室」 麻薬や犯罪がはびこる町で教育の理想を貫き通した実話

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

麻薬や犯罪がはびこる、アメリカとの国境に近いメキシコの町、マタモロス。小学校には満足な設備もなく、厳しい生活を強いられている子供たちの学力も国内最下位。そんななか、6年のクラスに教育への意欲を持つフアレス(エウヘニオ・デルベス)が赴任する。「君たちは23人でボートは六つ。どうする?」という問いを皮切りに、能動的に考えさせる〝型破り〟な授業は、進学どころか通学さえままならない子供たちの可能性をどんどん引き出していく。

クラス全体の成績が上昇し、10人が全国上位0.1%に食い込んだという驚きの実話を映画化。航空宇宙工学者になりたいという少女がゴミの山の頂に立ち、自作した望遠鏡で国境の先にあるロケット発射場を見つめる場面では、対比の利いた映像がテーマを鮮やかに伝えている。手っ取り早い方法で結果を出そうとするのではなく、探求する心を大事にするフアレス先生。教育における理想を貫き通した実話の重みが、この作品に説得力を与え、感動を呼ぶ。クリストファー・ザラ監督。2時間5分。東京・ヒューマントラストシネマ有楽町、大阪・テアトル梅田ほかで順次公開。(細)

ここに注目

主人公は子どもたちだ。目の色を変え、表情が生き生きと豊かになっていく過程がこの映画の肝。フアレス先生はヒーローではなく完璧でもない。ただ、こんな先生がいたら、と思わせてくれる。「現実は……」「現場では……」と異論もあるだろうが、人を導くとはどういうことか考える一助になる良作。(鈴)

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