毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。
2023.11.24
特選掘り出し!:「首」 戦国舞台に北野節さく裂
北野武監督の、「アウトレイジ 最終章」(2017年)以来の新作だ。独自の解釈で描いた「本能寺の変」だが、要は戦国を舞台にした「アウトレイジ」。欲にかられた男たちが、策略を巡らして殺し合う。
織田信長(加瀬亮)に反旗を翻した荒木村重(遠藤憲一)だったが、たちまち追い詰められて逃走する。信長は自身の跡目をエサに、羽柴秀吉(ビートたけし)、明智光秀(西島秀俊)らに村重討伐を命じる。村重は捕らえられ光秀に引き渡されるものの、光秀は恋愛関係にあった村重をひそかにかくまった。秀吉は徳川家康(小林薫)を懐柔しつつ、跡目を譲る気のない信長の本音を光秀に知らせ、決起を促す。
著名な戦国武将たちも北野監督にかかれば年齢構成もめちゃくちゃ、武士道精神などどこ吹く風。武士に憧れる農民茂助(中村獅童)や曽呂利新左衛門(木村祐一)らも加わって、〝全員ワル〟のキャラクター造形、権謀術数の限りを尽くす筋立ては、北野節さく裂で飽きさせない。豪華な俳優陣が好き勝手にはじけるのも、北野映画ならではだろう。
もっとも、アート色の強かった初期の北野映画とは離れる一方。あのストイシズムも、また見てみたいけれど……。2時間11分。東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田ほか。(勝)