「ふたりのマエストロ」 © 2022 VENDÔME FILMS ‒ ORANGE STUDIO ‒ APOLLO FILMS.

「ふたりのマエストロ」 © 2022 VENDÔME FILMS ‒ ORANGE STUDIO ‒ APOLLO FILMS.

2023.8.18

「ふたりのマエストロ」

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

フランスのクラシック界で、父子で活躍する指揮者のフランソワ(ピエール・アルディティ)とドニ(イバン・アタル)。ある日、フランソワに世界最高峰のミラノ・スカラ座から、音楽監督を依頼する電話が入る。歓喜するフランソワ。しかし、実際に依頼されたのは息子のドニで、父への連絡は誤りだった。ドニは父に真実を伝えなければならず苦悩する。

輝かしいキャリアを誇る大ベテランと、才能にあふれ飛ぶ鳥を落とす勢いの実力派。父子はライバル同士のためか、互いに打ち解けない。2人の葛藤、それを包み込むフランソワの妻(ミュウ・ミュウ)。三者三様の深みある演技が見どころだ。父子の不協和音は高まるが、フィナーレのコンサート場面でわだかまりを一掃する。圧巻というより驚きが先んじる展開。互いが心を開いたかは定かでないが、タクトで語り合う親子の会話が想像でき、高揚感が押し寄せる。モーツァルトやラフマニノフらの名曲も彩り、音楽への深い愛情も十二分に感じさせる一本。ブリュノ・シッシュ監督。1時間28分。東京・ヒューマントラストシネマ有楽町、大阪・シネ・リーブル梅田ほか。(鈴)

異論あり

数十年来の夢が間違い電話でぬか喜びとは、老いたフランソワにはキツい話。誤解を解くよう託されたドニも可哀そう。どうなることかとハラハラジリジリさせる展開はよくできているのに、唐突な終幕は驚くよりもキツネにつままれたよう。演奏場面は心地よいが、それでメデタシと言われても……。(勝)

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