「ミステリと言う勿れ」 ©田村由美/小学館©2023 フジテレビジョン 小学館 TopCoat 東宝 FNS27社

「ミステリと言う勿れ」 ©田村由美/小学館©2023 フジテレビジョン 小学館 TopCoat 東宝 FNS27社

2023.9.15

「ミステリと言う勿れ」

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

膨大な知識と独自の価値観による切り口で、まるで探偵のようにさまざまな事件の謎を解いてきた天然パーマの大学生、久能整(ととのう)(菅田将暉)。美術展を鑑賞するために広島を訪れ、女子高生の狩集(かりあつまり)汐路(原菜乃華)と出会い、アルバイトに誘われる。それは狩集家の莫大(ばくだい)な遺産相続に関するミッションだった。

田村由美の同名人気漫画を実写化して話題を呼んだ連続ドラマの劇場版。町田啓太、萩原利久、柴咲コウ、松下洸平ら、個性的なキャストが集った。原作では〝広島編〟と呼ばれるエピソードを基に映画化されており、ロケーションを生かしたストーリーが展開されていく。

このシリーズの魅力は、トリックや犯人捜しというよりも、事件に関わる人の心をいつの間にかほぐしていく整の語り口。映画版でも、「子供って乾く前のセメントのようなもの」など、心に刻まれるセリフがちりばめられている。整の超然としたおしゃべりや冷静な振る舞いはそのままに、汐路との絡みでどこかチャーミングな一面が見られるのも楽しい。2時間8分。松山博昭監督。東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田ほか。(細)

異論あり

人気テレビドラマの映画化はスケール感や俳優の豪華さが強調されがちだが、久能の微に入り細をうがつ注意力や探求心、シンプルで奇をてらわない言葉の面白さは健在だ。ただ、横溝正史的な物語のドロドロ感と久能の推理はいささかなじまず。謎解きも弱く、後味もすっきりとはいかなかった。(鈴)