「プリシラ」 ©The Apartment S.r.l All Rights Reserved 2023

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2024.4.12

「プリシラ」 エルビスとプリシラの異なる孤独

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

アメリカ軍将校である父の転属により西ドイツで暮らし始めた14歳のプリシラ(ケイリー・スピーニー)は、ある日、兵役のために赴任中だったエルビス・プレスリー(ジェイコブ・エロルディ)と出会う。親密な時間を過ごすが、エルビスは帰国。2年後、彼女はメンフィスにあるプレスリーの大邸宅、グレースランドに呼び寄せられ、暮らすことになる。

ソフィア・コッポラ監督がプリシラの実話を映画化。あくまでも彼女の視点で語られるエルビスは弱さや孤独を抱え、今で言うところのモラハラ男の気配も漂う。守られてはいるが自由はなく、夫の帰りを待つ日々の中で、いかにして自立していくのか。プリシラが閉じ込められている場所は「ロスト・イン・トランスレーション」の清潔なホテルの部屋や「マリー・アントワネット」のマカロンのような邸宅とも重なり、監督が大事にしてきた世界観が広がっている。プリシラの心情の変化が唐突なようにも感じられたが、飛び立つ瞬間は得てしてあっけなくも劇的なのかもしれない。1時間53分。東京・TOHOシネマズシャンテ、大阪ステーションシティシネマほか。(細)

ここに注目

エルビスと愛妻の映画だが、エルビスがステージで熱狂に包まれる映像はなく、むしろ米南部の保守性や時代の中で葛藤する。グレースランドにポツンと残され不安に押しつぶされそうになるプリシラも象徴的だ。コッポラ監督は、映像の深い陰影と奥行きで2人の異なる孤独を見事に際立たせた。(鈴)

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