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2024.8.09

「#スージー・サーチ」 SNS時代の闇に切り込む風刺劇

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

幼いころから謎解きが得意だったスージー(カーシー・クレモンズ)は、ポッドキャストで未解決事件を考察するが、フォロワーを獲得できない大学生。そんなとき人気インフルエンサーの同級生ジェシー(アレックス・ウルフ)が行方不明に。独自の調査に乗り出したスージーは、配信中にジェシーを救出して一躍時の人となるが、事件は思わぬ展開を見せていく。

デジタルネーティブのアマチュア探偵を主人公にしたミステリー劇。ところがインフルエンサー失踪事件の意外な真実が前半のうちに明かされ、映画はSNS時代の闇に切り込むブラックなドラマに転じていく。新人のソフィー・カーグマン監督は、ひねりの利いた脚本、ポップな映像感覚を生かし、今風のユーモアサスペンスというべき風刺劇に仕上げた。作風はいかにも軽めだが、スージーを取り巻くバイト先の店長、保安官といった怪しげなキャラクターの出し入れが巧みで、ほどよいスリルが持続する。成功欲に駆られた犯人の道徳的ジレンマの乏しさも、今どきの世相を反映しているのかも。1時間45分。東京・新宿シネマカリテ、大阪・テアトル梅田ほか。(諭)

ここに注目

「いいね!」でつながっていくSNS社会に生きる若者の、承認欲求の行方を描いたスリラー。スージーを演じるクレモンズが愛らしく、けろりとしたポップなタッチだからこそ、この世界の怖さが浮き彫りになっていく。カーグマン監督の才気が感じられる。(細)

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