「ザ・ホエール」 ©2022 Palouse Rights LLC. All Rights Reserved.

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2023.4.14

「ザ・ホエール」

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

恋人を失った心の傷を抱え、過食による肥満となり、引きこもり生活をしている教師のチャーリー(ブレンダン・フレイザー)。自らの姿を隠してオンライン授業を行う彼の部屋には看護師のリズ(ホン・チャウ)が訪れ、面倒を見ていた。死期が迫っていることを悟った彼は、離婚以来、音信不通の17歳の娘(セイディー・シンク)との関係を修復しようと決意する。

かつて「レクイエム・フォー・ドリーム」で依存から抜け出せない主人公を描いたダーレン・アロノフスキー監督が、舞台劇を映画化。容赦なく父に怒りをぶつける娘との衝突を描き、息が詰まる緊張感あふれる密室劇として完成させた。特殊メークの力も借りて精神と肉体の重さを表現したフレイザーが、アカデミー賞主演男優賞を受賞。彼が体現したチャーリーという男の人生に、表舞台から消えていた彼のキャリアを重ねずにはいられない。伝わってくるのは、ありのままの自分を許し、愛していくまでの心の変容。ラストの監督らしい大胆な映像が、大きな感動を与えてくれる。1時間57分。東京・TOHOシネマズ シャンテ、大阪・ステーションシティシネマほか。(細)

ここに注目

いかにも演劇的な室内劇だがチャーリーの家に出入りする人々の葛藤も描かれ、緊迫した会話に引き込まれる。破滅的な〝死〟を前提にしながらも、ラストぎりぎりまで心の救済を探求したフレイザーの演技、迫真の描写に胸をえぐられること必至。しばし深い余韻に浸りたい。(諭)

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