毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。
2024.3.29
私と映画館:穴場
東京・浅草六区は日本の一大興行街だった。映画館が建ち並び、日本映画黄金期には客入りのバロメーターとなって、映画会社が初日の成績を競っていたくらい。
私が知っている浅草は全盛期のずっと後。それでもその名残はあった。今では成人した長男が幼稚園児だったころ連れて行ったのは、確か浅草名画座だ。
「男はつらいよ」をスクリーンで見せようと思ったものの、子供料金がない。隣は成人映画館でモギリのおばちゃんは「子供の来る所じゃないよ」とばかりにジロリ。それでも子供はタダで入れてくれた。
それから間もなく、浅草名画座など残っていた映画館は閉館。松竹などが再開発して、映画館が入ったビルになる計画はいつの間にか頓挫した。かくて浅草映画興行の灯は消えたまま。
一方で上野や錦糸町などに、立て続けにシネコンが開館した。新作ならよりどりみどり。もっとも同系列が大半で、見られる映画の選択肢が多いわけではないのだが。
大方のシネコンはいつもにぎわっているが、1カ所だけは常になぜかガラガラ。話題作の封切り日、他がどこも満席なのに、そこだけは決まって席が取れる。商圏の違いか風水のせいか。理由はナゾだが、ひそかな穴場として重宝している。どこかはあえて書かない。【勝田友巳】