ひとしねま

2024.1.26

私と映画館:トンネルの先の光

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

映画館はトンネル。日常のひらけた風景から、閉じた暗い場所を経て別世界へ向かう感覚がある。映写機がスクリーンに照らし出す映画は、光。

映画館といえば、20年近く前、東京のBunkamuraル・シネマでタノビッチ監督の「美しき運命の傷痕」を見たときのこと。仕事がしんどかった日々、日曜日の夜にふらりとル・シネマへ向かい、たまたま見た本作の原題は「地獄」。映像、俳優の演技と物語に心を奪われ、ひととき日常を忘れて、また頑張ろうと思えた。まさにトンネルの向こうに光が見えた感覚。

今は海外で訪問先の映画館を訪れるのも楽しみ。パリ中心地の映画館は歴史を感じさせる荘厳な建築だったが、最新映像技術を使って「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」を上映していた。建設ラッシュのアジアのバンコクの映画館では、豪華でおしゃれなラウンジのような雰囲気にびっくり。米ロサンゼルスには高級レストランのような食事やワインも注文できる映画館がたくさんある。映画を見ながらおいしい食事もいただければ、映画を倍速などで見なくても、それこそ「タイパ」だ。

今、戦争や災害など痛ましいことはたくさんある。しかしコロナ禍が収束し、映画館にも気軽に行けるようになり、人々が暗闇の向こうの光を日常の中で見つけられる。少しは救いが増えたのではないかと思う。(GEM Partners代表・梅津文)

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