ひとしねま

2023.10.27

私と映画館:「小倉昭和館」へのスリリングな道のり

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

私の映画館デビューは3歳の時、映画好きの母に連れられて「蒲田行進曲」を見たそうだ。「E.T.」など洋画もたくさん見に行った。当時の記憶はあまりないが、映画好きになったのは、やはり幼い頃から映画館に親しんできたからだと思う。

高校の帰り道に一人でよく通ったのが1939年創業の「小倉昭和館」(北九州市)だ。JR小倉駅前の繁華街を抜けて旦過市場近くの映画館まで、10分ほどの道のりはどんな映画を見るよりスリリングだった。

私の高校は校則が厳しく、放課後に街中をふらついているところを見回りの教師に見つかると厳しいお説教が待っていた。街の人が「おたくの生徒が遊んでいる」と学校に〝通報〟するという、うそかまことか分からないうわさもあった。「先生に見つかりませんように」とドキドキだったが、昭和館に着いてしまえば不安な気持ちは吹き飛んだ。スタッフに制服姿を見とがめられることもなく、映画の世界に思う存分浸ることができた。

2022年夏、旦過市場で起きた火災により昭和館は全焼した。「私の映画館」がなくなってしまった。悲しくてたまらなかったが、今年12月の再開に向けて再建が進んでいると知り、うれしい気持ちでいっぱいだ。建物は新しくなっても、映画好きを温かく迎えてくれるあの雰囲気はきっと変わらないはずだ。【倉田陶子】

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