「Winter boy」 ©2022 L.F.P・Les Films Pelléas・France 2 Cinéma・Auvergne-Rhône-Alpes Cinéma

「Winter boy」 ©2022 L.F.P・Les Films Pelléas・France 2 Cinéma・Auvergne-Rhône-Alpes Cinéma

2023.12.08

「Winter boy」 胸に迫る10代の若者の衝動と再生への軌跡

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

寄宿制の高校に通う17歳の少年リュカ(ポール・キルシェ)の父が交通事故で急死した。その残酷な現実を受けとめられないリュカは、アーティスト志望の兄カンタン(バンサン・ラコスト)が暮らすパリのアパートで1週間を過ごすことに。そこで彼は兄のルームメートである青年リリオ(エルバン・ケポア・ファレ)に心引かれていく。

「今宵、212号室で」のクリストフ・オノレ監督の自伝的要素をはらんだ青春映画。耐えがたい喪失感にさいなまれ、混乱のスパイラルに陥った少年の葛藤を映す。モノローグを多用した繊細な語り口、ゲイであるリュカのセクシュアリティーを包み隠さず表現した大胆な性描写。それらが交じり合い、不安と好奇心のはざまで揺れる10代の若者の衝動、そして再生への軌跡が胸に迫る一作となった。アルプスのふもととパリにきらめく冬の澄んだ光も美しい。

オーディションで見いだされた美貌の新進俳優キルシェは「ふたりのベロニカ」のイレーヌ・ジャコブの息子。母親役でジュリエット・ビノシュが共演している。2時間2分。東京・シネスイッチ銀座、大阪・シネ・リーブル梅田ほか。(諭)

ここに注目
いくつか登場するパリの名所や街並みは、リュカの深い悲しみのせいかどことなく憂鬱に見える。それに比べ、彼が欲望を交わすシーンの若々しさときらめきは生への確信を感じさせ、対照的だ。脆弱(ぜいじゃく)で時にエキセントリックな内面が発露する青年は、古今東西美しい若者が似合う⁉(鈴)

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