シネマの週末

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2023.12.22

執筆陣が選ぶ今年の映画 この3本

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

2023年最後の「シネマの週末」は、毎年恒例、執筆陣が選んだ今年の「この3本」をお届けします。白丸数字が邦画、黒丸数字が洋画。あなたの3本と比べながらどうぞ。

鈴木隆(鈴)

①花腐し
②ほかげ
③波紋
❶ファースト・カウ
❷ヨーロッパ新世紀
❸星くずの片隅で

「福田村事件」など自国の負の歴史や事件、隠された問題に真摯(しんし)に向き合う作品が何本も公開され、注目を集めたことは今年最大の収穫だ。「ファースト・カウ」はここ数年でも断トツの傑作。

渡辺浩(渡)

①658㎞、陽子の旅
②ほかげ
③花腐し
❶キリング・オブ・ケネス・チェンバレン
❷パーフェクト・ドライバー/成功確率100%の女
❸大いなる自由

①どこにもいる善人面に注意。②負けてもチャラはない。戦友の敵、思い知ったか。③思い出した戦後の東京・新宿西口マーケット、日本刀の果たし合い。尻もちで終了。

倉田陶子

①遊撃/映画監督 中島貞夫
②赦し
③ロストケア
❶すべてうまくいきますように
❷生きる LIVING
❸青いカフタンの仕立て屋

今年の初め、中島貞夫監督にインタビューした。現役感にあふれていただけに、その数カ月後に亡くなったことが今もちょっと信じられない。洋画の上位2本は「人生のしまい方」を考えさせられた。

山口久美子

①北極百貨店のコンシェルジュさん
②BLUE GIANT
③名探偵コナン黒鉄の魚影
❶SHE SAID/シー・セッド その名を暴け
❷バービー
❸生きる LIVING

原作がすでに素晴らしい漫画をアニメ映画にするのは原作の宣伝くらいの意味しかないと思っていたことを深く反省。声や音や色が新しい感動をくれることもあると、①②などから感じている。

勝田友巳(勝)

①月
②福田村事件
③遠いところ
❶栗の森のものがたり
❷エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
❸オオカミの家

映画はいろんなことができる、と改めて感じた。邦画は批判を恐れず社会に切り込んだ作品に。瑕疵(かし)はあってもその意欲を。洋画はいずれもぶっ飛んだ発想にクラクラ。

細谷美香

①エゴイスト
②最後まで行く
③逃げきれた夢
❶バービー
❷SHE SAID/シー・セッド その名を暴け
❸サントメール ある被告

邦画はジャンルこそ違えど、主演俳優の勢いがありつつ繊細な芝居が心に残った3本。洋画は現代を生きる女性たちの声をすくい上げ、社会的な題材をエンターテインメントに昇華した作品を選んだ。

大高宏雄

①こんにちは、母さん
②せかいのおきく
③仕掛人・藤枝梅安1、2
❶キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン
❷熊は、いない
❸フェイブルマンズ

山田洋次、スコセッシ、スピルバーグら現代映画の巨匠たちの作品に圧倒された。監督は体力勝負でもあるが、その意味はかなり深いようだ。

高橋諭治(諭)

①ほつれる
②PERFECT DAYS
③ゴジラ-1.0
❶聖地には蜘蛛が巣を張る
❷ジョージア、白い橋のカフェで逢いましょう
❸コンパートメントNo.6

ヨーロッパなどのいわゆるアートハウス系作品が豊作の1年だった。総じて〝不穏な映画〟が数多く目についたが、来年も今の時代を射抜く映画監督たちのユニークな視点と想像力に期待したい。

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