「ゼンブ・オブ・トーキョー」

「ゼンブ・オブ・トーキョー」©ZOTFP

2024.10.25

「ゼンブ・オブ・トーキョー」 画面が活気づく11人それぞれのエピソード

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

修学旅行で地方から東京にやってきた高校生、池園(正源司陽子)は東京の全部を楽しもうと、行動班の班長として綿密な計画を立てて自由行動の日を迎えた。ところが班員たちは指定の場所にやってこない。池園は1人で、自分の作った予定表に従って東京を回り始める。一方ほかの班員たちは、それぞれの目的と思惑を果たすために、東京の街に散っていた。

日向坂46の4期生11人が出演するアイドル映画。この手の作品は旬のアイドルの放つオーラだけで画面が活気づく。東は浅草から西は下北沢まで、いかにもな東京名所に加え、普段は気づかない意外な東京情緒も交えながら、恋愛あり自分探しあり、推し活ありと、11人それぞれのエピソードを詰め込んだ。

「658㎞、陽子の旅」の熊切和嘉監督が、軽いタッチの群像劇に挑戦。めまぐるしく移動しながら人物を出し入れして物語を進め、若い俳優たちを魅力的に見せる。アイドル映画が思わぬ傑作に化けた、というほどではないが、ファンには十分楽しめそう。1時間27分。東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田ほか。(勝)

ここに注目

修学旅行の風景に絞ったことで、メンバーそれぞれの特徴や親しみやすさが前面に出た。どこにいてもなじんでしまうのは若者の自由さであり、彼女らの適応力の高さだろう。大きな事件が起きない筋立てでドラマ的にはもの足りないが、スケッチに徹してふんわりとした躍動感を生み出した。(鈴)

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