「エージェントなお仕事」の一場面

「エージェントなお仕事」の一場面

2022.12.18

チョ・ヨジョンなど豪華なゲストも花を添える韓国のお仕事モノ「エージェントなお仕事」:オンラインの森

いつでもどこでも映画が見られる動画配信サービス。便利だけれど、あまりにも作品数が多すぎて、どれを見たらいいか迷うばかり。目利きの映画ライターが、実り豊かな森の中からお薦めの作品をお選びします。案内人は、須永貴子、村山章、大野友嘉子の3人です。

ひとしねま

大野友嘉子

米国ロサンゼルスで豪邸を売買する高級不動産仲介会社の女性エージェントたちを追ったリアリティー番組「セリング・サンセット~ハリウッド、夢の豪華物件~」が面白い。米国で最も地価が高い地域の一つとされる土地で、ライバルとしのぎを削りながら大金を動かすバリキャリたちの仕事ぶりとド派手な日常は、空恐ろしく、まぶしくて魅惑的だ。
 
体のラインを強調するピタッとしたワンピース、高さ10センチはあるだろうピンヒール、エルメスやシャネルなどのハイブランドのバッグは、彼女たちの「制服」のようなもの。
 
ポルシェでビバリーヒルズをさっそうと走り、売り出し中の億ションのお披露目やシマウマやシルク・ドゥ・ソレイユの団員を演出に使った婚約発表会など、何かにつけて豪華絢爛(けんらん)なパーティーを開く。買い手である顧客だけでなく、販売する側の彼女たち自身が実力と富を持つパワフルな女性たちなのだ。
 
セレブの街・ハリウッドのライフスタイルとは、こうもきらびやかなのだろうか。友人に勧められて見始めたところ、止まらなくなってしまった。中毒性があるらしい。

こうした「お仕事モノ」は韓国のドラマ界でも定番だ。警察や検事、弁護士といった鉄板だけでなく、あまり知られていないユニークな職業を扱っているのが特徴だ。今年は気象予報士の世界を取り込んだパク・ミニョンとソン・ガンのダブル主演の「気象庁の人々:社内恋愛は予測不能⁈」が斬新だった。また、少し前になるが、商社マンの奮闘記「ミセン -未生-」(2014年)は世のサラリーマンの共感を集めたと同時に、非正規雇用の問題に切り込んだ良作だった。

数多くのスター俳優を抱える芸能事務所を舞台にした「エージェントなお仕事」もユニークなお仕事モノドラマである。主役は、大手事務所「メソッドエンターテインメント」のエージェントたち。俳優たちが抱えるトラウマ、家族問題、キャリアの悩みに一つ一つ対応しながら、制作サイドとキャスティングの駆け引きをしたり、撮影のトラブルに対応したりと駆け回る、1話完結型の作品だ。
 
「賢い医師生活」のクァク・ソニョン、「悪の花」のソ・ヒョヌ、「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」で一躍有名になったチュ・ヒョンヨン、バラエティー番組でも人気のイ・ソジンらが、華やかな世界の案内人として出演する。
 

フランスの人気シリーズ「エージェント物語」を原作に忠実にリメーク

韓国芸能界の「裏側」を描いた‥‥‥と書きたいところだが、どちらかというと「舞台裏」と言った方がしっくりくる。スターたちの本音や素顔を映し出そうとしてはいるものの、登場人物は「いい人」ばかり。性善説に立って、冷や汗をかくようなドロドロとした展開がほとんどない。
 
俳優たちが秘密にしている弱点は克服され、離婚の危機や嫁姑(しゅうとめ)関係など、彼らが抱える家庭内の問題は無事に解決される。毎回ハッピーエンドとまではいかなくても、大体のことが丸く収まって終わる、良くも悪くも安心して見られるドラマである。

本作は、フランスの人気シリーズ「Dix Pour Cent」(邦題「エージェント物語」)を韓国の制作会社スタジオドラゴンがリメークした。少々物足りなく感じるのは、原作に忠実に作っているからだろう。オフィスのレイアウトまでそっくりに作っている。
 

カメオ出演する著名なゲストを見つける楽しみも

とはいえ、韓流ファンの心をくすぐる、うれしい演出もある。毎回、著名な俳優がゲストとしてカメオ出演するのだ。こちらもフランス版を踏襲してのことだが、ツウは盛り上がるだろう。
 
第1話のカメオは、映画「パラサイト 半地下の家族」(19年)で美しくも能天気なセレブ妻を演じたチョ・ヨジョン。「パラサイト」での役は、「実際の彼女もこういう感じなんじゃないの?」と思う程ハマっていた。無邪気さや天真爛漫(らんまん)さが時として他者への想像力を欠き、残酷になり得るということを体現したチョ・ヨジョンなくして同作の成功はなかっただろう。
 
そんな彼女は今回、年齢の壁にぶつかる俳優を演じた。米国のタランティーノ監督から映画出演の打診があったものの、若さを求められ……という筋書き。「パラサイト」の奥様は、どんなスターに変身するのか。想像するだけでワクワクする。ちなみに、「パラサイト」を見たタランティーノが、チョ・ヨジョンを絶賛したというのは有名なエピソードだ。
 
オ・ナラとパク・ホサンがカメオ共演した第5話も味わい深い。日本の植民地になる前の朝鮮半島を描いた「ミスター・サンシャイン」(18年)を思わせるセットが現れる。2人は同作に出演していないし、イ・ビョンホンもキム・テリも、「ミスター・サンシャイン」のほかのキャストは誰も出ない。
 
だけど、ドラマの鍵となる宿「ホテル・グローリー」が登場すると、「やっぱり、ミスター・サンシャインのセットだった!」と無性にうれしくなり、同時に悲しい物語を思い出して胸が締め付けられる。
 
他にも、世界で大ヒットした「イカゲーム」(21年)の“あのコンビ”がニアミスするなど、プッと噴き出す場面も。近年のドラマのおさらいにもなる。
 

「韓流ブーム」20周年の節目を彩る、韓国芸能界に踏み込んだ一作

来年は、日本で「韓流ブーム」が巻き起こってから20周年の節目。ブームの火付け役、ドラマ「冬のソナタ」は2003年に日本で放送された。
 
この20年間、韓流はドラマから音楽、ファッション、メークに裾野を広げた。「パラサイト」「愛の不時着」(19年)のヒットは日本で「第4次韓流ブーム」と呼ばれたが、もはや一過性のブームではない。一つのコンテンツとして日本の社会に定着している。
 
そして言うまでもなく、韓国のエンタメはアジアから世界に羽ばたくことに成功した。米国は依然としてエンタメ界の王様だが、世界は今、韓国のポップカルチャーに熱視線を注いでいる。
 
ハリウッドからの出演オファーや評価に一喜一憂する時代は終わりつつあるように思う。その業界のバックステージをのぞく番組があったら、どれだけの人が引き寄せられることか。これからも、韓国芸能界に踏み込んだ作品をどんどん作ってほしい。
 
Netflixシリーズ「エージェントなお仕事」独占配信中
 

エージェントなお仕事

クセの強いスターの相手をしたり、ライバルを出し抜いたり。担当する芸能人のご機嫌を取りながら、その魅力を引き出すために奮闘する、芸能事務所のエージェントたちの日常を描き出す。全12話。

ライター
ひとしねま

大野友嘉子

おおの・ゆかこ 毎日新聞デジタル報道センター記者。2009年に入社し、津支局や中部報道センターなどを経て現職。へそ曲がりな性格だと言われるが、「愛の不時着」とBTSにハマる。尊敬する人は太田光とキング牧師。ツイッター(@yukako_ohno)でたまにつぶやいている。
 

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