「葬送のカーネーション」の公開イベントにて岡本多緒さん

「葬送のカーネーション」の公開イベントにて岡本多緒さん

2023.12.22

俳優の行動や仕草で物語を表現し、映像の美しさで全てを語り掛ける「葬送のカーネーション」岡本多緒さんが語る

公開映画情報を中心に、映画評、トピックスやキャンペーン、試写会情報などを紹介します。

ひとしねま

ひとシネマ編集部

第 27 回ソフィア国際映画祭・審査員特別賞受賞、第 28 回テトゥアン地中海映画祭・コンペティショングランプリ受賞、そして 2022 年には東京国際映画祭・アジアの未来部門に出品されるなど、 世界各国で注目を浴びるベキル・ビュルビュル監督による現代社会の寓話、映画「葬送のカーネーション」が 1 月 12 日(金)より公開となります。

本作は約 370 万人といわれる世界で最多の難民を受け入れているトルコの荒涼たる南東部を舞台に、祖母の遺体を故郷に還すために、 戦火から逃れた祖国を目指す少女とその祖父の道行を丹念に描く注目作です。

この度、〝TAO〟名義でスーパーモデルとして世界中で活躍し、「ウルヴァリン:SAMURAI」など ハリウッド映画にも複数出演した後、本年より日本に拠点を戻し、新たなキャリアを再スタートさせた、俳優・監督・モデルの岡本多緒さんをゲストに迎えたトークイベント付き先行試写会を実施。

こういう作品に出演できたらとても光栄

この映画の率直な感想について聞かれた岡本さんは、「ほとんどセリフがない映画で、物語が進むにつれて、主人公の少女ハリメを演じるシャム・シェリット・ゼイダンさんの、初めての映画出演とは思えないような演技力に驚かされました。登場人物たちの旅の行く道と共に、どんどんと引き込まれる力のある作品です」と絶賛。本作のように、セリフの少ない映画の魅力をどう捉えるか問われると、「偉そうなことは言えないんですが ・・・・・・」と謙遜しながらも、「日本の映画は説明セリフが多く、『言い過ぎ!』と思ってしまうことが多いです。日本人は〝行間を読む文化〟があるのに、なぜ映像作品になるとこんなにセリフで埋め尽くされるのか・・・・・・、不思議ですよね。もちろんそれが上手く働いている作品もありますが、この映画のように、セリフがほとんどなく、俳優の行動や仕草で物語を表現し、映像の美しさで全てを語り掛けるスタイルには「やられた!」と思います。こういう作品に出演できたらとても光栄だと思います」と、海外作品ならでは演出に感銘を受けたことを語りました。

©️FilmCode

新しくチャレンジしよう

海外の映画演出についての話から、2013年に「ウルヴリリン:SAMURAI」でハリウッド女優デビューし、数多くの海外作品に出演してきた岡本さんが、日本に帰国し、俳優のみならず映画監督にもチャレンジしようと思ったきっかけについて聞かれると、「ハリウッドでデビューをさせていただきましたが、ハリウッドで出演してきた作品は自分が見て育ったタイプの作品ではありませんでした。『なんか違うな?』と思ってしまう瞬間があって・・・・・・。私はヒューマニティのある作品が好きだ!と思い切って、日本に帰国し、俳優として、監督として、新しくチャレンジしようと決意したんです」と、新たなキャリアをスタートさせたことについて、活き活きと語りました。

ずっと義母のことを考えて

岡本さんは俳優やクリエイターとして活躍する一方で、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の定期支援者として活動を行い、世界に向けて発信を続けています。個人としてもチベット難民を義理の母に持っており、本作に事前に寄せられていたコメントには、「ずっと義母のことを考えて見ていました」と綴っており、映画の中で描かれた〝難民〟というテーマについて、「遠い国のお話ではなく、自分の身にも起きる出来事であると思いながら見てほしい」と訴えました。


「私の義母がチベット人で、大変な幼少期をすごしてきた人です。義母に出会ったとき、歴史の中で日本がアジア諸国にしてきたことを、どれだけ学校で教えていないのか、ということを実感しました。今、世界で起きていることは、人間誰もが持っているかもしれない狂気から起きていることなのかもしれない。人種という偏見を取り払い、この映画で描かれていることは、自分のことでもあると思いながら、この映画を〝今〟、見てほしいです」と、現代社会に生きる私たちの胸に強く訴える作品であることを力強く主張しました。

最後に今一度本作について、「人間性を忘れずに生きていかないといけない。そんなことを心に刻んでくれる映画です。ぜひお友達や家族など、大切な人におすすめしてください!」とコメントしました。

ライター
ひとしねま

ひとシネマ編集部

ひとシネマ編集部

新着記事