ブータン 山の教室  ©2019 ALL RIGHTS RESERVED

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2021.4.01

時代の目:ブータン 山の教室 野心胸に赴任した教師

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)。

国の豊かさを幸福の度合いで測るというブータン。どんな生活なのか、ずっと気になっていた。ブータン発のこの映画、その一端がうかがえる。

やる気ゼロの教師ウゲン(シェラップ・ドルジ)はオーストラリアに移住して歌手になろうと決意していたのに、山上の辺地ルナナの学校への赴任を命じられた。バスの終点から徒歩で山を登り、1週間かけて到着すると、村は電気も通じず、学校には黒板も紙もない。ヤクと暮らす村の人々と純朴な子どもたちに触れるうち、ウゲンの心に変化が生まれて……。

物語は定石通りでも、画面は新鮮。都市からルナナに至る道のりと、移り変わる景色、人々の暮らしぶり。実際の住民を起用したという登場人物のたたずまいと表情が土地と調和して、穏やかで豊かな情感を与えている。広い世界に飛び出して才能を試すか、地に足を着け、人のためになる仕事に喜びを見いだすか。ルナナが理想郷のように映るだけにラストシーンのウゲンの選択はほろ苦い。秘境探求の先に、幸福とは何かを改めて考えさせる深みを見せる。パオ・チョニン・ドルジ監督。1時間50分。東京・岩波ホール。大阪・シネ・リーブル梅田(30日から)ほか全国でも順次公開。(勝)