ビストロ酒場伊達男のローストポーク丼

ビストロ酒場伊達男のローストポーク丼

2023.4.07

ロケ飯、街への貢献と引っ張りだこになるのは間違いないお店! 伊達男の中久木真也さんは波乱万丈

3度の飯より映画が好きという人も、飯がうまければさらに映画が好きになる。 撮影現場、スクリーンの中、映画館のコンフェクショナリーなどなど、映画と食のベストマリッジを追求したコラムです。

宮脇祐介

宮脇祐介

「雇われて店長をしていたお店から独立したのが2020年4月5日。新型コロナウイルスの緊急事態宣言の2日前で、開店してからは必死でやれることはやってきた」と言うビストロ酒場伊達男の中久木真也さんは波乱のできごとをさも簡単に語り始める。


高校を卒業して1年料理の専門学校で中華を専攻していたのだが、箱根プリンスホテル(現ザ・プリンス箱根芦ノ湖)のイタリアンレストランで研修し、「イタリアンって良いなあ」と思った。東京都内のホテルの中華で1年半働いたが、その思いが強く辞めて街のイタリア料理店に転職した。その店で粉物・パティスリー担当から始まり前菜、セカンド、メインとお店を任されるようになった。その後もリストランテ、ピッツァリア、バルといろいろなイタリア料理の形態の店で研さんを積んだ。独立を考え出した頃、東京ではないなと地元の埼玉県本庄市に戻り、縁あって寄居町に店を出すオーナーの元で伊達男を作った。店名の意味はイタリア(伊国)料理の達人と高い理想掲げた。
 
開店早々コロナで困っていたが、営業ができる時は必ず店を開けた。「開いている安心感を作りたかった」と言う。独立直後商工会に出入りするようになり、同会内にあるフィルムコミッションの白川真さんと出会った。それがロケ飯の世界にも足を踏み入れるきっかけとなった。「最初にある有名バンドのプロモーションビデオ撮影のロケ飯を150食作り持っていった。ミーハー心で会えるかなと思ったのですが、ここ置いといて!と現実に引き戻された」と笑う。ロケ飯はタレントが入る前に入れる鉄則をはじめて知るのであった。ちなみに寄居町は第66回カンヌ国際映画祭審査員賞を受賞した是枝裕和監督「そして父になる」の河原のシーンなどさまざまなロケーションに使われている。
 
伊達男では基本ランチメニューをロケ飯にする。ローストポーク丼とキューバサンドが人気だと言う。どちらも彩りも良く食べやすく、もちろんとてもおいしい。

人気のキューバサンド
 
今年40歳を迎える中久木さんはキッチンカーを回せる店員を育てることと、通信販売に取り組むのが当面の目標と語る。独立した早々、店員とぶつかりお店存続の危機があったと話してくれた。「人を雇うのは難しい。しかし、それでは職人から先に行けない。でも今は人手不足が深刻で、多店舗展開はまず無理。それならまずはキッチンカーを回せる人を育てる」ことが大切でお店をベースに少しずつ広げていく。「キッチンカーをイベントなどに出すとお客さんが広がる。しかし、自分が店を閉めてまでやると本末転倒になる」とつくづく思ったと言う。

ビストロ酒場伊達男のキッチンカー

次の通信販売は人気のローストポークや、最近人気の出ている焼き菓子を売っていきたいと言う。コロナ禍での船出のためとにかくなんでもやるとなりふり構わず必死にやってきたので、今度は地元の食材を使って商品を作って売りたいと思っているそうだ。寄居近辺の埼玉県北西部は武州豚、むさし麦豚、古代豚などのブランド豚の名産地である。その豚を使った地元名物を作りたいと。
 
寄居では数少ない若手経営者。「50代以上が占める割合が9割に迫る」経営者の中で、白川さんが頼れる若手パートナーとして考えているのが中久木さんなのだ。4月29、30日には寄居駅南口駅前拠点施設「Yotteco(ヨッテコ)」と広場「YORIBA(ヨリバ)」オープンにともないイベントが開催される。このイベントへの出店など、さらにお店、ロケ飯、街への貢献と引っ張りだこになるのは間違いないお店なのでした。
 

☑人気ロケ飯

ローストポーク丼

前日からマリネしていた豚肉の塊の表面に焼き目を付ける。それを低温調理。最初100度で40分、仕上げは65度で3時間半。焼き固めた表面で中の肉にうまみを閉じ込める。柔らかくて、味の主張もあるローストポークにだしご飯とごまドレッシングのキャベツ、きざみのりが絶妙のバランスで、箸が止まらない一品。

ライター
宮脇祐介

宮脇祐介

みやわき・ゆうすけ 福岡県出身、ひとシネマ総合プロデューサー。映画「手紙」「毎日かあさん」(実写/アニメ)「横道世之介」など毎日新聞連載作品を映像化。「日本沈没」「チア★ダン」「関ケ原」「糸」「ラーゲリより愛を込めて」など多くの映画製作委員会に参加。朗読劇「島守の塔」企画・演出。追悼特別展「高倉健」を企画・運営し全国10カ所で巡回。趣味は東京にある福岡のお店を食べ歩くこと。

カメラマン
宮脇祐介

宮脇祐介

みやわき・ゆうすけ 福岡県出身、ひとシネマ総合プロデューサー。映画「手紙」「毎日かあさん」(実写/アニメ)「横道世之介」など毎日新聞連載作品を映像化。「日本沈没」「チア★ダン」「関ケ原」「糸」など多くの映画製作委員会に参加。朗読劇「島守の塔」企画・演出。追悼特別展「高倉健」を企画・運営し全国10カ所で巡回。趣味は東京にある福岡のお店を食べ歩くこと。