「マッドゴッド」 ©2021 Tippett Studio

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2022.12.02

特選掘り出し!:「マッドゴッド」 名匠が吹き込む生命感

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

「スター・ウォーズ」「ロボコップ」シリーズなどに携わり、アカデミー賞受賞歴もあるフィル・ティペットは、知る人ぞ知る特殊効果アーティストだ。アナログなストップモーションアニメの第一人者である彼が放つ初の長編監督作は、構想から30年を費やした入魂のプロジェクト。コマ撮りと実写を融合させ、唯一無二のSFファンタジーを完成させた。

人類最後の男(アレックス・コックス)からある任務を託された防護服姿のアサシンが地下世界に降り立つ。何もかもが荒廃しきったその地では不気味な怪物が跋扈(ばっこ)し、顔のないゾンビ風の労働者が消耗品のように扱われている。

これぞ暗黒のディストピア、もしくは不条理な悪夢。全編にわたって狂気じみた光景を紡いだティペットは、デジタル万能時代へのアンチテーゼをたたきつけるように異形のバケモノや機械に生命感を吹き込み、おぞましいほど生々しい地獄巡りに誘う。そしてセリフを排除し、宗教、戦争、環境破壊、錬金術などのイメージが錯綜(さくそう)する映像世界は、「2001年宇宙の旅」のごとき壮大な終幕へと向かう。いささか難解だが、比類なき映画体験である。1時間24分。東京・新宿武蔵野館、大阪・シネ・リーブル梅田ほか。(諭)

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