「マクストン・ホール ~私たちをつなぐ世界~」より  © Prime Video / Stephan Rabold

「マクストン・ホール ~私たちをつなぐ世界~」より  © Prime Video / Stephan Rabold

2024.6.07

ドイツ版「花より男子」⁈ な世界観。名門校が舞台のドラマ「マクストン・ホール ~私たちをつなぐ世界~」:オンラインの森

いつでもどこでも映画が見られる動画配信サービス。便利だけれど、あまりにも作品数が多すぎて、どれを見たらいいか迷うばかり。目利きの映画ライターが、実り豊かな森の中からお薦めの作品を選びます。案内人は、須永貴子、大野友嘉子、梅山富美子の3人に加え、各ジャンルの精鋭たちが不定期で寄稿します。

梅山富美子

梅山富美子

名門高校に通う御曹司と真面目な奨学生が最悪な出会いからひかれ合う、まるでドイツ版「花より男子」といった世界観のドラマ「マクストン・ホール ~私たちをつなぐ世界~」のシーズン1(全6話)が、Prime Video で配信されている。
 


奨学生のルビーと御曹司のジェームスの反発とひかれ合いを描く

本作は、ドイツ人の作家​​モナ・カステンの人気小説をドラマ化したもの。名門校マクストン・ホールで、お金も影響力もない奨学生のルビー(ハリエット=ヘルビヒ・マッテン)は、英オックスフォード大学で学ぶことを夢見て最終学年をまい進する予定だった。そんな矢先、傲慢な御曹司のジェームス・ビューフォート(ダミアン・ハルドン)に関わる秘密を目撃してから、夢への計画が狂い出す。
 
一族の名誉のため、秘密を口外しないようにとお金で買収しようとするジェームスに怒りを覚えるルビー。このことをきっかけに、未来を約束された立場でやりたい放題のジェームスと、自分の実力で夢をつかもうとするルビーは強烈に反発し合う。しかし、これまで出会った誰とも違うタイプであることから、お互いに相手のことが頭から離れず、次第に猛烈にひかれていく。
 
お金持ちと庶民の恋という「花男」的な物語で、高校とは思えないお城のような校舎で繰り広げられるベタな展開に合いの手を入れたくなる本作。傲慢なジェームスだが、ルビーを買収しようとわざわざ現金を用意して手渡しする丁寧っぷりは憎めないところがあるし、対するルビーも、お金を舞い散るように落として受け取りを拒否する。
 
恋に落ちる2人……というよりジェームスがルビーに首ったけになるテンポ感がよく、ドレス姿のルビーに見ほれ、プールで溺れるルビーを助けてお姫様抱っこするジェームスなど、かゆいところに手が届く胸キュンシーンは挙げるときりがない。
 
さらに、思い通りに生きてきたわがままおぼっちゃまかと思いきや、敷かれたレールにしたがってエリートの道を進まなければならないジェームスの苦難も明らかに。父親に脅され、ルビーと距離を置かなければならない苦難の表情はなんとも魅惑的だった。
 
〜以下、本編のネタバレあり〜
 

単なる学園ものには収まらない

あるあるな物語と称したものの、ただの学園恋愛ドラマに収まらない作品にしているのは、ジェームスの妹リディアという複雑なキャラクターの存在だ。商才の見込みがありながらも父親に正当に評価されず、実績や跡取りの座は長男ジェームスのもの。さらに、教師との禁断の恋愛に身を投じ、妊娠という重大な問題に直面することになる。
 
進学を諦めて子どもを産むのか、それとも……と悩むリディアに、ルビーは母親向けのコースがあるオックスフォード大学を提案する。進学やいろいろなことを諦めなければならないというリディアの考えを変える、どこまでも前向きなルビーの強さがよく表れていたシーンであり、ドラマでそういった選択肢を提示することはとてもポジティブなメッセージだったように感じた。
 
全6話で構成されたシーズン1は、原作3部作の1作目「セイブ・ミー」を実写化。Prime Video のインターナショナル・オリジナル作品としては史上最大の視聴者数を記録し、アメリカ、イギリスなど120カ国地域以上のプライム・ビデオ視聴ランキングで上位にランクイン。そして、先日、シーズン2の制作が発表された。
 
シーズン2では、ルビーとジェームスの前に立ちはだかるジェームスの父親、リディアがどんな選択をしたのか、ジェームスの親友の恋など解決していない問題をどう描いていくのか気になるところだ。そして、高校生にしては艶気がありすぎるジェームス役のダミアン・ハルドンをまた堪能できることを楽しみにしたい。
 
「マクストン・ホール ~私たちをつなぐ世界~」は Prime Videoで独占配信中

ライター
梅山富美子

梅山富美子

うめやま・ふみこ ライター。1992年生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒業後、映像制作会社(プロダクション・マネージャー)を経験。映画情報サイト「シネマトゥデイ」元編集部。映画、海外ドラマ、洋楽(特に80年代)をこよなく愛し、韓ドラは2020年以降どハマり。

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