この1本:「オマージュ」 柔らかに先人の無念を
韓国でも女性たちが、自らの置かれた状況に異を唱えている。シン・スウォン監督のこの作品も、時をさかのぼって女性たちの思いをたどっているが、押しつけがましさはみじんもない。つつましく柔らかく、とぼけた笑いも交えながら、しかし芯には強い意志が込められている。 中年の女性映画監督ジワン(イ・ジョンウン)が、1960年代に先達の女性監督ジェウォンが撮った映画の、失われた場面を捜すという物語。ミステリー調の筋立てもさることながら、ジワンが抱えるモヤモヤが、この映画のみどころだ。 ジワンは公開中の3作目の監督作が不入りで、新しいアイデアも不発。新作を撮るあてがない。夫と大学生の息子と3人暮らしだが、家事...