「すべての夜を思いだす」 日常を緩やかに切り取る
東京・多摩ニュータウンの春の一日。その日が誕生日の知珠(ちず)(兵藤公美)は、友人からの引っ越しを知らせるはがきを頼りに歩き続ける。ガス検針員の早苗(大場みなみ)は行方不明になった老人を捜し、大学生の夏(見上愛)は亡くなった友人が撮った写真のネガの引換券を、友人の母に届ける。3人はさりげなく交差していく。 公園の緑や木漏れ日、団地のたたずまい、木々を揺らす風の音や鳥の鳴き声、車や自転車の走行音。それらの音と映像が本作の軸になり、そこに暮らす人たちの日常を緩やかに切り取った。大きなドラマ展開のない物語を長回しを駆使してじっくり見せる。 説明的なセリフの必要性はゼロ。淡々とした会話やゆったりと...