「すべての夜を思いだす」 ©2022 PFF PARTNERS(PiaHoriPro Inc.NIKKATSU) PFF General Incorporated Association

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2024.3.01

「すべての夜を思いだす」 日常を緩やかに切り取る

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

東京・多摩ニュータウンの春の一日。その日が誕生日の知珠(ちず)(兵藤公美)は、友人からの引っ越しを知らせるはがきを頼りに歩き続ける。ガス検針員の早苗(大場みなみ)は行方不明になった老人を捜し、大学生の夏(見上愛)は亡くなった友人が撮った写真のネガの引換券を、友人の母に届ける。3人はさりげなく交差していく。

公園の緑や木漏れ日、団地のたたずまい、木々を揺らす風の音や鳥の鳴き声、車や自転車の走行音。それらの音と映像が本作の軸になり、そこに暮らす人たちの日常を緩やかに切り取った。大きなドラマ展開のない物語を長回しを駆使してじっくり見せる。

説明的なセリフの必要性はゼロ。淡々とした会話やゆったりとした映像が、観客の記憶の断面と呼応する。土器や土偶、ホームビデオなどの小道具で街や人の歩みに触れて厚みを持たせた。ただ、暗くなってからのダンスや花火にはやや息切れ感も。「わたしたちの家」で注目の清原惟監督のPFFスカラシップ作品。1時間56分。東京・ユーロスペース。大阪・シネ・ヌーヴォ(4月27日から)など各地でも。(鈴)

異論あり

のどかで平和そのものだが、かすかに寂寥(せきりょう)感も漂うニュータウンというロケーション、そこを漂流する登場人物たちを写し取った映像が魅力的だ。しかし鑑賞後には物足りなさが残る。ドラマやキャラクターがぼんやりしすぎて、雰囲気は心地よいが胸に響かない〝ふわふわ日常映画〟にとどまった。(諭)

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