この1本:「不思議の国のシドニ」 喪失と孤独が共鳴
どこに行っても訪日観光客でにぎわっていて、日本人気に感心するばかり。本作が作られたのも、そんな関心の高まりのおかげかも。居心地よさそうな日本が映っている。 フランス人作家のシドニ(イザベル・ユペール)は、自著が日本で翻訳再版され、宣伝を兼ねて来日する。編集者、溝口(伊原剛志)の案内で京都を訪ねると、旅館の部屋に死んだ夫の幽霊が待っていた。 日本の映画ファンは、外国人の目に映る不思議な日本をさんざん見せられてきた。だから、シドニがホテルの従業員のお辞儀に丁寧なお辞儀で返すのも、神社仏閣を巡り、和食のお膳をことさらに映したり日本家屋の縁側に腰掛けて庭を眺めたりするのも、「あるある」の見慣れた場...