時代の目:「のさりの島」 虚実のあわい、心地よく
熊本・天草の寂れた商店街にやって来た、オレオレ詐欺の男(藤原季節)。楽器店主の艶子(原知佐子)から金をだまし取ろうとする。艶子はなぜか、男を孫の将太と呼んで迎え入れ、奇妙な同居生活が始まった。コロナ禍の疲れた心にじわりとしみる佳作である。 艶子は男がニセモノだと気付いている。男もそれを悟っている。それでも孫とばあちゃんとして、いたわり合いながら日常を営んでゆく。偽りの現実に本物の感情。虚実のあわいを漂う関係性が、危なっかしくも心地よい。 地元FM局のパーソナリティー清ら(杉原亜実)たち地域の若者が、昔の商店街の映像を集めて上映会を計画している。男は清らにひかれて集まりに加わるものの、男女の...