「霧の淵」 人の気配をなくしてしまった集落に生きる思い
奈良県奥吉野の山々に囲まれた川上村。旅館や商店などが軒を並べにぎわっていた時期もあったが、今は過疎化が進んでいる。イヒカ(三宅朱莉)は老舗旅館を営む家で育った12歳の少女。父良治(三浦誠己)は別居しているが、母の咲(水川あさみ)と祖父シゲ(堀田眞三)が旅館を切り盛りしている。しかし、シゲが突然姿を消してしまう。 なら国際映画祭が製作。誰も住んでいない家屋、ダムの底へと続く旧道、朽ち果てた映画館など、人の気配をなくしてしまった集落とその変遷を、ドキュメンタリー的なタッチで切り取った。かつて人々が暮らしていた痕跡からは、かすかな郷愁とともにわびしさと無常感も漂う。旅館には人と人とが近かった時代の...