この1本:「ノーヴィス」 垣間見る没我の境地
映画の序盤で、「なぜボート部に入るのか」と聞かれた主人公が口を開いたところで邪魔が入り、答えを言わないまま物語が始まる。その答えを、言葉や説明ではなく映像による描写で、とことん突き詰めてゆく。主人公の異様な精神状態と、見ている方も共振しそうな危ない一作である。 タイトルは「新人」の意味だ。女子ボート部に入部した大学1年生のアレックス(イザベル・ファーマン)は、ハードなトレーニングにのめり込む。一方で、専攻の物理で好成績を収めることもおろそかにせず、指導教官とも付き合い始めた。部活、勉強に恋。と並べれば青春満喫、充実した学生生活のようだが、映画は対極。アレックスは苦行僧のように自分を追い込み、...