この1本:「市子」 人の存在のもろさ問う
同棲(どうせい)中の恋人、長谷川義則(若葉竜也)に結婚を申し込まれた翌日、川辺市子(杉咲花)は全てを捨てて失踪する。折しも山中から白骨化した死体が発見された。事件を捜査する刑事(宇野祥平)は義則に「市子という女性は存在しない」と告げる。義則は3年も暮らしを共にしながら何も知らなかったことに気づき、市子の行方を捜して彼女を知る人たちを訪ね歩く。 戸田彬弘監督が、自身の舞台劇を映画化した。知っていると思っていた人物の意外な素顔が次々と明らかになるというミステリー仕立ての展開だ。証言者ごとの章立ての構成で、観客は狂言回しの刑事と義則とともに市子の過去をたどり、さまざまな姿を目にすることになる。 ...