この1本:「ほかげ」 戦争が残した闇描く
公開中の映画「ゴジラ−1.0」やNHK連続テレビ小説「ブギウギ」と同じ、終戦直後の日本が描かれている。しかし「ほかげ」が描くのは、戦争をやり直す男たちでも混乱をたくましく生きる女でもない。ようやく生き延びたものの深い傷を負い、戦争が終わってなお苦しむ人々である。「野火」で戦場の悲惨さに、「斬、」で殺人の恐怖に肉薄した塚本晋也監督が、戦争が残す闇に目を向けた。 2部構成の物語は簡潔だ。前半は焼け残った飲み屋の屋内劇。女(趣里)が1人、酒と自分の体を売って暮らしている。若い復員兵(河野宏紀)と戦災孤児の少年(塚尾桜雅)が頻繁に出入りするようになって、3人は家族のように暮らし始めた。しかしそれもつ...