特選掘り出し!:「湖の女たち」 〝映画の力〟みなぎるスリル
吉田修一の同名小説に基づく群像ミステリーである。2013年に吉田の「さよなら渓谷」を映画化した大森立嗣監督がメガホンを取り、重層的かつスケールの大きな映像世界を構築した。 琵琶湖近くの介護施設で100歳の老人が不審死を遂げた。若手刑事の濱中圭介(福士蒼汰)と先輩の伊佐美(浅野忠信)は、殺人事件と見なすが捜査は難航。ストレスをため込んだ圭介は、介護士の豊田佳代(松本まりか)にゆがんだ欲望を抱き、孤独な佳代もまた彼との密会に身を焦がしていく。 社会通念上、誰の共感も得られない淫らな性愛をむさぼる男女の軌跡を縦軸にしながら、映画はある薬害事件の真相を追う記者の池田(福地桃子)の取材を通して、戦時...