この1本:「太陽と桃の歌」 小さき人々 哀切込めて
スペインの片隅の家族農園に起きるささやかな悲劇を、美しい自然の風景の中に描く。失われゆくものへの哀悼を込めた好編だが、遠景には巨大な資本が家族経営の農家を圧殺しのみ込んでゆくことへの静かな怒りがある。カルラ・シモン監督の長編2作目、ベルリン国際映画祭で最高賞の金熊賞を受賞した。 キメット(ジョルディ・プジョル・ドルセ)を中心としたソレ家は、スペイン・カタルーニャ地方で桃農園を営んでいる。キメットの父ロヘリオ(ジュゼップ・アバッド)は、地主のピニョールから突然、太陽光発電のパネルを設置するので土地を明け渡すよう求められた。土地はロヘリオが先代の地主から借りたが、契約書はないという。困惑するキメ...