つげよしはる
漫画家。「無能の人」「ねじ式」原作:「雨の中の慾情」
若い頃に、つげ義春の漫画をいくつかまとめて読んだことがありました。「雨の中の慾情」の映画ができたと聞いた時、おぼろげに、男女2人きりの短編漫画で、つげ義春作品らしいエロスと珍妙さをそなえていたことを覚えていたので、たちまち興味をかき立てられました。 音声ガイド制作に取り掛かるにあたって、スクリーンで試写ができました。見終わった後、小さい声で「すっっばらしかったー」とつぶやきました。促音の「っ」が二つです。まるで、香水の香りの変化を楽しんだような印象が残りました。トップノートはのんきなムードの中にセクシーさが漂う香り、ミドルノートで不穏さが混ざったミステリアスな香り、ラストノートでカオスの中に...
松田高加子
2024.12.11
「岬の兄妹」(2018年)や「さがす」(21年)、ドラマ「ガンニバル」の片山慎三監督が、「ねじ式」「無能の人」等で知られる漫画家つげ義春のシュルレアリスム作品「雨の中の慾情」を映画化。片山慎三監督とは、「ガン二バル」でもタッグを組んだ大江崇允が脚本協力で参加した本作は、つげ義春の原作を起点に2人の男と1人の女の切なくも激しい性愛と情愛が入り交じる、数奇なラブストーリー。第37回東京国際映画祭コンペティション部門公式出品作品。 貧しい北町に住む売れない漫画家・義男(成田凌)は、怪しい商売をしているらしい大家の尾弥次(竹中直人)に自称小説家の伊守(森田剛)とともに引っ越しの手伝いに駆り出され、離...
売れない漫画家の助川(竹中直人)は河原で石を売り始める。妻のモモ子(風吹ジュン)と息子の三助を養わなくてはならないと思っているが、漫画は描けず、商売に手を出しては失敗続き。石のオークションに参加すれば失敗して持ち出しになる始末。助川と家族のエピソードを、とぼけた味わいでつづる。 つげ義春の同名漫画を原作とした、竹中直人の監督デビュー作。ベネチア国際映画祭で国際批評家連盟賞、毎日映画コンクールでは竹中のスポニチグランプリ新人賞などを受賞した。