明日の食卓 (C)2021「明日の食卓」製作委員会

明日の食卓 (C)2021「明日の食卓」製作委員会

2021.5.27

明日の食卓

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

神奈川のフリーライター留美子(菅野美穂)、大阪のシングルマザー加奈(高畑充希)、静岡の専業主婦あすみ(尾野真千子)は、いずれも石橋という姓を持ち、小学5年生のユウという息子を育てている。そんな見ず知らずの3人の母親を主人公にした椰月美智子の同名小説の映画化。

夫とのすれ違い、仕事と育児の両立の難しさ、ひとり親の貧困など、世の母親たちが苛(さいな)まれるありとあらゆる問題が詰め込まれた家族ドラマだ。直接交錯しない三つの物語をパラレルに展開させ、それぞれの日常の揺らぎを見せていく瀬々敬久監督の語り口は、さすが熟練の技。しかも今回はサイコ・スリラー/ホラーに振り切ったような強烈な描写も盛り込み、男性キャラクターのことごとく幼稚で無責任な挙動も戦慄(せんりつ)を呼ぶ。衝撃的なプロットのひねりも用意された後半は、母親たちがさらなる破滅的事態へ。そこで〝母子の愛〟という主題に迫真性を吹き込む、主演女優3人の渾身(こんしん)の演技が圧巻である。2時間4分。東京・角川シネマ有楽町、京都・イオンシネマ京都桂川ほか。(諭)

異論あり

3人の母親はあまりにステレオタイプだが、子育て中の描写にはリアリティーも感じられた。一方、夫たちはどうしようもないほど小心で子供っぽく、父親にもなり切れていない。子供とのズレが表面化した後の〝希望〟を感じさせる展開には無理やり感が残った。3女優は熱演。(鈴)

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