この1本:「春に散る」 手に汗握るボクシング
ボクシング映画はシンプルだ。リングでは倒すか倒されるか。殴り合いにのめり込む人々の生き様(時には死に様)や人間模様がドラマとなる。それだけに、試合の場面がウソくさいと全てが台無し。このところ俳優が体作りに精を出し撮影技術も蓄積されて、「BLUE/ブルー」「ケイコ 目を澄ませて」など力作が目立つこのジャンル。本作は瀬々敬久監督が、沢木耕太郎の小説を映画化した。見応え十分、プロの力を感じさせる一作だ。 40年ぶりに米国から帰国した元ボクサーの広岡(佐藤浩市)は、引退してくすぶっていた黒木(横浜流星)と出会う。黒木は広岡のパンチを受けボクシングへの情熱に目覚め、再起を期して広岡に弟子入りを志願した...